1. 国民皆年金

 日本の公的年金制度は、自営業者や無業者を含め、国民すべてが国民年金制度に加入し、基礎年金給付を受けるという国民皆年金の仕組みとなっています。

 昭和36年に自営業者等を対象とする旧国民年金制度が発足し、国民皆年金が実現しましたが、当時は、現在の国民年金制度・基礎年金給付のように国 民すべてを対象にする制度はなく、分立した制度体系をとっていたため、産業構造の変化等によって、財政基盤が不安定になったり、加入している制度により給 付と負担の両面で不公平が生じていました。

 このため、昭和60年改正において、全国民共通に給付される基礎年金を創設するとともに、厚生年金等の被用者年金は、基礎年金給付の上乗せの2階部分として、報酬比例年金を給付する制度へと再編成しました。

 こうした国民皆年金制度をとっていることにより、安定的な保険集団が構成され、社会全体で老後の所得保障という問題に対応していくことが可能となっています。

 基礎年金は、老後生活の基礎的部分を保障するため、全国民共通の給付を支給するものであり、その費用については、国民全体で公平に負担する仕組みとなっています。具体的には、基礎年金給付費総額を各制度に属する被保険者(加入者)数等に応じて負担しています。

2. 社会保険方式

 日本の公的年金は、社会保険方式となっています。

 公的年金制度の加入者は、それぞれ保険料を拠出し、それに応じ年金給付を受けます。したがって、基本的には保険料を納めなければ年金はもらえませんし、納めた期間が長ければ支給される年金も多くなります。

 自分が若いときに納めた保険料の見返りとして、年金をもらえるという社会保険の仕組みは、給付と負担の関係が明確であることから、国民の理解を得 やすい面があります。したがって、公的年金制度は、老後の所得保障を確保し、高齢者になったときに社会的に肩身の狭い立場から解放され、子どもによる扶養 などに頼ることなく、自立して生活できるようになる仕組みです。

 社会保険である公的年金は、強制加入の仕組みをとっています。強制加入としている理由は、若いころから老後に備えて必要なお金を十分に貯蓄しておくという人は多くはないでしょうから、やりなおしのきかない人生を 後になって後悔しないようにするという個人の視点でみた必要性とともに、現役世代の国民が全員参加で公的年金を支えることを義務づけることによって安定した所得保障制度を構築するという制度全体の視点からみた必要性があるからです。

 また、公的年金は貯蓄と違い、自分の納めた保険料が利子とともにそのまま自分に返ってくるというものではありません。公的年金は、現役時代の給与の低い人にも一定以上の年金を保障する仕組みとなっており、いわば所得再分配を伴うものとなっています。

 国民年金については、無業者など保険料負担が困難な人も被保険者(加入者)となりますので、このような人に対しては保険料免除の制度を設け、年金受給権を保障しています。

3. 世代間扶養

 かつて高齢者は、子どもによる私的な扶養や老後のための私的な貯蓄等によって老後生活を送っていました。

 貯蓄については、誰でも自分の寿命は予想できませんし、必要十分な貯蓄額を事前に知ることはできません。しかも、若いころから引退時、さらに寿命を全うするまでには何十年という長い時間があり、予想を超えるインフレによる貯蓄の目減りなどが生じる可能性もあります。

 子どもによる私的な扶養も不安定です。頼る子どもがすべての人にいるわけではありませんし、子ども自身の経済状況に左右されることになります。日 本の社会の構造変化、特に第1次産業で働く人の激減、核家族化や若者の都会への集中、サラリーマン化等により、私的な扶養に頼ることはさらに難しくなりま した。

 また、平均寿命が大幅に伸び、老後生活が長期化したことも、私的な扶養や貯蓄によって老後生活を送ることを困難にしています。

 今日、公的年金は、基本的には現役世代の保険料負担で高齢者世代を支えるという世代間扶養の考え方で運営されています。これは、私的に行っていた老親の扶養・仕送りを、社会全体の仕組みに広げたものです。現役世代が全員でルールに従って保険料を納付し、そのときそのときの高齢者全体を支える仕 組みは、私的な扶養の不安定性やそれをめぐる気兼ね・トラブルなどを避けるというメリットがあります。また、現役世代が生み出す富の一定割合をそのときそ のときの高齢者世代に再分配するという仕組みをとることにより、物価スライドによって実質的価値を維持した年金を一生涯にわたって保障するという、安定的 な老後の所得保障を可能にしているのです。

少子高齢化が進行している日本において、この世代間扶養が維持できるのか、それが難しい問題だと私は考えています。

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