日本に真の参謀と呼べる人材が少ないのも、国民性に無縁ではない。長年、日本の企業風土にさらされ続けていると、どんなに優秀な頭脳の持ち主でも「官僚化」してしまうのだ。
この場合の官僚化とは、責任を取らないですむ道を巧妙に選んで人生を送るという意味だ。正解を知りながらも自分の保身を優先し、プロジェクトが失敗すれば「やっぱりな。オレはあのときこうすればいいと思ったんだが」と後から評論する人種だ。だが、こんな人は参謀にはなれない。潰れかけた会社を立て直すことなどできやしない。
参謀とは、天気予報を見て「今日の天気は晴れのち曇り。降水確率は50%か・・・」とつぶやく人ではない。雨が降りそうなら、「社長、傘を持っていってください!」と言える人なのだ。単なる分析屋さんや評論家さんとの違いはそこだ。私がこの国で40年間コンサルタントとして稼げたのは、日本人がいまだにこの最後の一言が言えないからなのだ。
分析だけでなく、どういう行動をとればいいかまでのロードマップを描くのが参謀の役目なのだ。一言で言えば「結論が言える人」。それが参謀だ。
そういう「参謀力」を持った人たちが増えてこないと、日本という国自体がこのまま衰退に向かってしまう。
参謀というのは、将軍(社長)に対するアドバイザーだ。若くしてそれができるようになるには、面倒がらずに自分の足を使って人の話を聞きに行ったり、街に出てデータを集めたりしなくてはならない。ネットを使ったっていい。とにかく汗をかいて資料を集め、必死で分析し、そしてそれを将軍にわかりやすい形で伝える、つまり具体的な行動として提言することのできる人が参謀と名乗れるのだ。
本当に知りたい中身、そこを語れる者が参謀。
企業参謀ノート【入門編】 大前研一監修 プレジデント社より