労働者派遣制度について、昨年の改正労働者派遣法の国会審議において、登録型派遣、製造業務派遣、特定労働者派遣事業の在り方及び26業務に該当するかどうかによって派遣期間の取扱いが大きく変わる現行制度の在り方について、検討すべき事項として附帯決議が付されました。厚労省では、昨年10月から「今後の労働者派遣制度の在り方に関する研究会」を設けて検討を重ねています。
登録型派遣・製造業務派遣・特定労働者派遣事業の在り方について
(1)登録型派遣
登録型派遣については、派遣元における雇用が不安定であり問題であるという指摘がある一方で、労働者・企業の双方にニーズが存在し、臨時的・一時的な需給調整機能として有効に機能しているという指摘もある。
禁止・規制に賛成の意見 | ・雇用の不安定さや派遣切りが起こったことが問題なので、禁止すべき。 ・派遣契約期間と労働契約期間が一致する登録型派遣は、本来の派遣の趣旨と一致しないため、認めるべきでない。 ・登録型派遣は、派遣契約の不更新・解除が、労働者の雇用喪失に直結する。登録型派遣がある限り、不況時等の雇止め・解雇が繰り返されるため、労働者保護の観点からも原則禁止し、派遣は常用型のみとすべき。 |
禁止・規制に反対の意見 | ・豊富な雇用機会の提供、迅速な需給調整機能等を有しており、派遣先・派遣労働者双方のニーズがある。 ・直接雇用に移行せず、失業者の増大につながる。 ・中小企業が人材を確保できなくなる。 ・採用までに相当の時間がかかるので、需要に即応できず、正社員の残業で対応せざるを得なくなる。 ・諸外国においても認められている形態であり、禁止することは適当でない。 ・改善の余地があることは確かだが、問題点を改善しながら継続していくべき。 |
(2)製造業務派遣
製造業務派遣については、いわゆる「派遣切り」の場面では派遣労働者の雇用の安定が図られず、技能継承の観点からも問題であるという指摘がある一方で、これを禁止することは、季節的変動等による生産現場の臨時的・一時的なニーズに柔軟に対応することができず、ひいては生産拠点の海外移転や中小企業の受注機会減少を招きかねないという指摘もある。
禁止・規制に賛成の意見 | ・雇用の不安定さや派遣切りが起こったことが問題なので、禁止すべき。 ・ものづくりの現場力が落ちたため、製造業務への派遣は禁止すべき。 ・製造業務派遣は、高度熟練技術の継承の一助となるもの以外は禁止すべき。 ・製造業で労災が多発しており問題なので、禁止すべき。 |
禁止・規制に反対の意見 | ・派遣を望む人のニーズに対応できなくなる。 ・直接雇用に移行せず、失業者の増大につながる。 ・中小企業が人材を確保できなくなる。 ・採用までに相当の時間がかかるので、需要に即応できず、正社員の残業で対応せざるを得なくなる。 ・グローバル競争が激化する中で、柔軟な生産体制の構築のためにも製造業務派遣は必要不可欠であり、禁止されると海外に生産拠点を移す動きにつながることが懸念される。 ・諸外国においては認められている形態であり、禁止することは適当でない。 ・製造業務派遣の禁止には6割の派遣労働者が反対。改善の余地があることは確かだが、問題点を改善しながら継続していくべき。 ・労働者及びメーカーの双方のニーズに対応した労働力の需給調整システムであり、我が国のもの作りの基盤を支えるもの。産業空洞化を回避するためにも、禁止や規制強化を行うべきではない。 |
(3)特定労働者派遣事業
平成20年の「今後の労働者派遣制度の在り方に関する研究会」報告書において、「常用型派遣」については「期間の定めのないもの」と再整理することが適当とされているが、現状においてどう考えるか。
現行制度の背景について | ・労働者が常時雇用される労働者のみである形態の事業については、すべての派遣労働者の雇用の安定が図られている点で、その他の形態に比べより望ましい形態であり、派遣労働者の雇用管理を適正に行い得るか等の要件を事前にチェックするまでの必要性に乏しいと考えられるため、特定労働者派遣事業については届出制となっている。 |
範囲の限定や基準の厳格化を行うべきとの意見 | ・一部の特定労働者派遣事業者は、一般労働者派遣の資産要件を満たせないために特定の届出をしており、実態としては、短期の雇用契約を反復し、派遣契約終了と同時に雇用契約も終了するような派遣を行っている。 ・「常時雇用」の範囲を無期雇用に限定すべき。 ・特定労働者派遣事業と一般労働者派遣事業とを統合して1つの制度とするか、特定も一般と同様の基準による許可制とすべき。 |