企業のブランド戦略の多様化により、従来の文字や図形からなる商標に加え、「動き」、「輪郭のない色彩」、「音」等も新たな商標として活用されています。アメリカや韓国等では、これらの新しいタイプの商標が法律で保護されていますが、わが国は漸く法整備への動きが出てきたところです。

■新しいタイプの商標の保護の導入について

経済産業省(産業構造審議会・知的財産政策部会・商標制度小委員会)において、商標制度に関する法制的な課題について検討を行い、報告書として取り纏められた概要は、次のとおりです。

1.現行制度の概要

(1)現行制度の保護対象

現行制度においては、「商標」の対象である「標章」を「文字、図形、記号若しくは立体的形状若しくはこれらの結合又はこれらと色彩との結合」と定義し、これを前提として、使用の定義、登録要件、不登録事由、出願手続等を定められています。

現行商標法に掲げられた各標章は、いずれも一定の形状を備え、かつ、視覚で認識できるものであるから、形状を備えていない「輪郭のない色彩」や、視覚で認識できない「音」、「におい」等は、現行商標法における「標章」には該当せず、同法の保護を受けることができません。

他方、「動き」、「ホログラム」、「位置」の商標については、文字や図形等の「標章」からなるものともいえるが、これらの内容を正確に表す出願方法等が整備されていないことから、現行制度の下では商標登録を受けつけられてはいません。

(2)現行制度において商標登録されない商標の類型

わが国の商標法において商標登録を受けることはできないが、諸外国において商標登録を受け得るものとしては、「動き」、「ホログラム」、「輪郭のない色彩」、「位置」、「音」、「におい」、「味」、「触感」、「トレードドレス(注※)」の商標(以下、「非伝統的商標」という。)が挙げられます。

(注※)海外主要国において「トレードドレス」として登録されている例をみると、(a)商品の立体形状、(b)商品の包装容器、(c)建築物の形状(店舗の外観(内装))、(d)建築物の特定の位置に付される色彩等が含まれているが、これらは立体商標等によって保護され得るとも考えられる。

2.問題の所在

(1)諸外国等の動向

海外においては、文字や図形等からなる伝統的な商標以外にも、「動き」、「輪郭のない色彩」、「音」等からなる非伝統的商標は保護されており、その動きも広がりつつあります。

アメリカにおいては、使用主義に基づき自他商品役務の識別力を有するあらゆる標識が商標として保護が可能であり、「動き」、「ホログラム」、「輪郭のない色彩」、「位置」のように視覚で認識できる商標に限らず、「音」や「におい」のように視覚で認識できない商標も保護されています。

欧州においては、欧州指令により欧州共同体加盟国の商標法のハーモナイゼーションが進められており、その欧州指令では、商標を構成し得る標識を例示しているものの、写実的に表現できる標識であって、自他商品役務の識別ができるものであれば商標として保護が可能であり、「動き」、「ホログラム」、「輪郭のない色彩」、「位置」のように視覚で認識できる商標に限らず、視覚で認識できない「音」の商標も保護されています。

韓国では、既に導入していた「動き」、「位置」等の視覚で認識できる商標に加え、商標法を改正し、「音」、「におい」等の視覚で認識できない商標についても保護対象とすることとしました(2012年3月15日施行)。

台湾においても、既に導入していた「輪郭のない色彩」、「音」に加え、「動き」、「ホログラム」についても保護対象とする法改正を行っています(2012年7月1日施行)。

中国においても、「輪郭のない色彩」、「音」の商標を保護対象とすることについて検討されています。

近年、二国間で締結されている自由貿易協定(FTA)等において、視覚的に認識できない商標(「におい」等)も保護対象として考慮されるべき条項が盛り込まれるなど、非伝統的商標の保護対象が更に広がりつつあります。

(2)保護のニーズ

近年のデジタル技術の急速な進歩や商品やサービスの販売戦略の多様化に伴い、企業等は自らの商品又はサービスのブランド化に際し、文字や図形等からなる伝統的な商標だけではなく、「動き」や「音」等からなる非伝統的商標も用いるようになってきている。

特に、グローバルに事業展開を行っているわが国企業の中には、言語を超えたブランドメッセージの発信手段として、海外において非伝統的商標の権利を取得し、それを活用している事例もあり、非伝統的商標に対する保護のニーズは高まってきています。

3.対応の方向性

(1)基本的な考え方

非伝統的商標の保護は国際的な趨勢となっているばかりでなく、わが国企業の保護のニーズも高まっています。そのため、企業の多様なブランドメッセージ発信手段の保護、模倣品対策の拡充、わが国が加盟しているマドリッド協定議定書に基づく国際登録制度を利用した低廉・簡便な海外における権利取得を可能にするという観点から、わが国においても、非伝統的商標についての制度整備に早急に取り組むべきであり、現行のわが国商標法の体系に則した制度設計を行う必要があること。

(2)新たに保護対象とする商標の類型

経済産業省の商標制度小委員会では、商標の権利範囲の特定性、国際的な状況等を踏まえ、非伝統的商標のうち、「動き」、「ホログラム」、「輪郭のない色彩」、「位置」、「音」(これらを総称して「新商標」という。)を、新たに保護対象とすることが適切である、と整理しています。

また、非伝統的商標のうち、上記の類型以外の「におい」等(「その他の非伝統的商標」という。)については、諸外国において保護されている実例も一定程度あり、今後その保護のニーズが高まることも想定されることから、適切な制度運用が定まった段階で保護対象に追加できるよう、小委員会において併せて検討を進めていくことが適当であること。

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