法務省・法制審議会から民法の債権関係の規定見直しに関する中間試案が公表されました。現行民法が明治29年の制定以来、全般的な見直しが行われてこなかったこと、社会・経済が大きく変化し、取引形態も多様化・複雑化していることを踏まえ総合的な見直し作業が行われています。
◎中間試案において、主な検討対象とされた民法の規定は、次のとおりとなっています。
・第1編(総則)、第90条から第174条の2まで。
・第3編(債権)、第399条から第696条まで。
なお、中間試案では、上記の民法の規定に関して、現時点で改正が検討されている項目のみが取り上げており、特段言及されていない規定は、現行規定が維持されるものと思われます。
当該中間試案を一読していただければお分かりになるかと思いますが、専門家の間でも議論が分かれる点が多数存在していることが見て取れます。一例として「消滅時効」の項についてその一部を紹介します。
1.職業別の短期消滅時効の廃止
民法第170条から第174条までを削除するものとする。
<概要>
職業別の細かい区分に基づき3年、2年又は1年という時効期間を定めている短期消滅時効(民法第170条から第174条まで)を廃止するものである。
この制度に対しては、対象となる債権の選別を合理的に説明することが困難である上、実務的にも、どの区分の時効期間が適用されるのかをめぐって煩雑な判断を強いられて分かりにくい等の問題点が指摘されていることを考慮したもの。
2.債権の消滅時効における原則的な時効期間と起算点
【甲案】「権利を行使することができる時」(民法第166条第1項)という起算点を維持した上で、10年間(同法第167条第1項)という時効期間を5年間に改めるものとする。
【乙案】「権利を行使することができる時」(民法第166条第1項)という起算点から10年間(同法第167条第1項)という時効期間を維持した上で、「債権者が債権発生の原因及び債務者を知った時(債権者が権利を行使することができる時より前に債権発生の原因及び債務者を知っていたときは、権利を行使することができる時)」という起算点から[3年間/4年間/5年間]という時効期間を新たに設け、いずれかの時効期間が満了した時に消滅時効が完成するものとする。
(注)【甲案】と同様に「権利を行使することができる時」(民法第166条第1項)という起算点を維持するとともに、10年間(同法第167条第1項)という時効期間も維持した上で、事業者間の契約に基づく債権については5年間、消費者契約に基づく事業者の消費者に対する債権については3年間の時効期間を新たに設けるという考え方がある。
中間試案は、上記のような形式で記載されていますので、専門家のコンセンサスを得るのも大変です。我々国民にとっては、改正の内容如何によって日常生活に大きな影響が生じますので、今後も作業の推移を注意深く見守っていく必要があるでしょう。