厚生労働省の有識者会議「今後の労働者派遣制度の在り方に関する研究会」は、労働政策審議会へ提出する報告書の素案を公表しました。この中で、期間制限のない政令26業務の廃止を検討事項にあげ、業務ではなく個人単位で同一の派遣先への派遣期間の上限を設定すべきであるとの提言をし、有期雇用派遣の受入期間の上限については3年を中心に検討するとしています。
◎労働者派遣制度の課題
労働者派遣制度については、派遣元事業主、派遣先、派遣労働者といった当事者や経営者団体、労働組合などから、平成24年の法改正の議論等において、様々な問題点や課題が指摘されています。その中で、今後の労働者派遣制度の在り方の方向性に大きく関係するものとして、以下の3点に整理しています。
1点目<派遣労働者の保護>
平成24 年の法改正により派遣労働者の保護が強化されたが、労働者派遣法は、「常用代替防止」という考え方から、どうしても常用労働者の雇用確保に主眼が置かれ、派遣労働者の保護とのバランスがとれていないのではないかとの指摘がなされている。
2点目<派遣労働者のキャリアアップを促進する仕組みの必要性>
・派遣労働は、派遣先で比較的定型的な業務に従事する場合も多く、派遣元事業主との関係で比較的短期の雇用契約が多い。
・他の非正規雇用と同様、能力開発の機会が少なく、労働者のキャリアアップが図られにくいという課題がある。
・本人の希望に基づき、正規雇用・無期雇用への転換の促進や、キャリア形成支援を行っていくことが重要である。
・改正労働契約法では、有期雇用の労働者が長期間継続して就業する場合には、無期雇用への転換という方向性が示されているが、無期雇用には長期間の就業を視野に入れて職務遂行能力の向上により格付けを上げるなどの人事制度の整備が求められる。
・有期雇用から無期雇用への円滑な移行を可能にするためにも、個人がキャリアアップできる仕組みを整備していくことが必要である。
3点目<労働者派遣制度はルールが複雑でわかりにくい>
・制度をわかりやすいものとすることが求められている。特に派遣先における派遣受入可能期間の制限については、派遣労働者自身の就業環境に直接関係する規制であるにも関わらず、わかりにくいとの指摘がある。
・26業務への該当の有無等について、関係者間で判断が分かれる事態も発生している。
◎今後の制度のイメージについて
今後の制度のより具体的な仕組みについては、例えば、以下の3 つの仕組みを主な構成要素とする制度とすることが考えられる。
(ア)個人レベルでの派遣期間の制限
有期雇用派遣について、派遣先の組織・業務単位ごとに期間制限を行うこととし、同一の有期雇用派遣労働者について、派遣先の組織・業務単位における受入期間に上限を設ける。
なお、派遣先の組織・業務単位は、範囲の大きさにより、同一業務、課、部、事業所、企業など多くの選択肢が考えられる。
(イ)派遣期間の上限に達した者への雇用安定措置
派遣元は、同一の有期雇用派遣労働者が、派遣先の組織・業務単位における受入期間の上限に達する場合は、希望を聴取し、派遣先への直接雇用の申入れ、新たな派遣就業先の提供、派遣元での無期雇用化等のいずれかの措置を講じなければならないこととする。
(ウ)派遣先レベルでの派遣期間の制限
派遣先は、受け入れている有期雇用の派遣労働者の交代等によって継続的な受入れが上限を超す場合には、労使のチェックの対象となるものとする。
具体的には、派遣先において受け入れている派遣労働者の交代等により、継続的な有期雇用派遣の受入れが上限年数を超す場合、派遣先の労使のチェックの対象となるものし、事業所における労使の会議等の判断により、上限年数を超えた継続的受入れ、及びその後一定期間内における同じ組織・業務単位内での新たな有期雇用派遣労働者の受入れの可否を決定するという仕組みとする。