厚生労働省の「今後の労働者派遣制度の在り方に関する研究会」は、これまでの検討を踏まえて報告書を公表しました。この中で、期間制限のない政令26業務の廃止を検討事項にあげ、業務ではなく個人単位で同一の派遣先への派遣期間の上限を設定すべきであるとしており、今後は、労働政策審議会職業安定分科会労働力需給制度部会において、労使を交えた更なる検討が加えられます。
報告書の概要
◎登録型派遣・製造業務派遣の在り方
・登録型派遣は労働力の需給調整の仕組みとして有効に機能しており、仮に禁止した場合、経済活動や雇用への影響が懸念される。
・登録型派遣については、雇用の不安定性への対応が必要であり、後述の雇用安定措置を講じていくことが考えられる。
・製造業務派遣について指摘されている問題は、製造業務の有期雇用労働者一般に関係する事項であり、労働者派遣制度の中で対応すべき理由に乏しい。雇用の不安定性については、登録型派遣をめぐる雇用の不安定性の議論の中で検討すべき。
◎特定労働者派遣事業の在り方
・特定労働者派遣事業には有期雇用を反復更新している者も含まれており、それらの者の雇用が必ずしも安定していない状況。
・「常時雇用される」を「期間の定めのない」ものと再整理することで、特定労働者派遣事業はすべての派遣労働者を無期雇用する派遣元に限定することが適当。
◎期間制限の在り方等
(1)26 業務という区分に基づく規制の在り方について
・「専門性」は時代とともに変化するため、判断基準を明確に定義するのは困難。
・26 業務の該当の有無をめぐり関係者間で解釈の違いが生じるケースが発生。
・現行の26業務という区分に基づく規制の廃止を含め、労働政策審議会で議論していくことが適当。
(2)現行の常用代替防止策の課題
・常用代替防止は派遣労働者の保護や雇用の安定と必ずしも両立しない。
・正規雇用労働者と同様の待遇の派遣労働者まで一律に抑制の対象とすることは適当でない。
・期間制限の存在が派遣労働者の雇用の不安定性の一因に。
・派遣労働者の所属する単位を変更すれば、同一の派遣労働者の受入れを長期間続けることができる仕組みとなっている。
(3)常用代替防止の再構成
・有期雇用派遣は、間接雇用かつ有期雇用であるため、派遣労働者の雇用の不安定性、キャリアアップの機会が乏しい、派遣先での望ましくない派遣利用の可能性、拡大しやすい性質といった特徴があることから、一定の制約を設け、無限定な拡大を抑制していくことが望ましい。
・常用代替防止の考え方は、今後、対象を有期雇用派遣に再整理した上で、個人が特定の仕事に有期雇用派遣として固定されない、また労働市場全体で有期雇用派遣が無限定に拡大しないという個人レベルの常用代替防止派遣先の常用労働者が有期雇用派遣に代替されないことという派遣先レベルの常用代替防止の2つを組み合わせた考え方に再構成。
・無期雇用派遣は常用代替防止の対象から外すが、無期雇用の労働者にふさわしい良好な雇用の質の確保を図っていくことが望まれる。
(4)今後の制度について
・今後の常用代替防止のための制度については、有期雇用派遣を対象とし、
ア.労働者個人単位で同一の派遣先への派遣期間の上限を設定する
イ.アにより派遣労働者を交代することで有期雇用派遣を続けることが可能となる点に対しては、派遣先の労使がチェックする仕組みを考えるとすることを中心に検討していくことが望まれる。
・派遣の継続性については、判断基準となる範囲の設定によって様々な案が考えられる。
・労使のチェックの仕組みについても、様々な案が考えられる。
・個人単位の派遣期間の上限に達した有期雇用派遣労働者には、派遣元が雇用の安定のための措置を講じることが適当。
【今後の制度のイメージ】 例えば、以下を主な構成要素とする制度が考えられる。
ア.個人レベルでの派遣期間の制限
・・・同一の有期雇用派遣労働者について、派遣先の組織・業務単位における受入期間に上限を設ける。
(組織・業務単位の範囲の大きさにより、多くの選択肢)
イ.派遣期間の上限に達した者への雇用安定措置
・・・派遣元は、有期雇用派遣労働者が受入期間の上限に達する場合、希望を聴取し、派遣先への直接雇用の申入れ、新たな派遣就業先の提供、派遣元での無期雇用化等のいずれかの措置を講じる。
ウ.派遣先レベルでの派遣期間の制限(派遣先の労使のチェック)
・・・継続的な有期雇用派遣の受入れが上限年数を超す場合、派遣先の労使の会議等の判断により、上限年数を超えた継続的受入れ等の可否を決定する。
・有期雇用派遣の受入期間の上限については、個人単位、派遣先単位共に3年とすることを中心に検討することが考えられる。