厚労省・労働政策審議会は、厚生労働大臣に対し、「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律等の一部を改正する法律案要綱」についての答申を行いました。厚生労働省は、この答申を踏まえ、平成26年通常国会へ改正法案を提出する予定です。
■労働者派遣制度改正法案要綱のポイント
1.登録型派遣・製造業務派遣
・経済活動や雇用に大きな影響が生じる可能性があることから、禁止しない。
・雇用の不安定性への対処として、有期雇用派遣労働者に対する雇用安定措置等を講ずる。
2.特定労働者派遣事業
・特定・一般の区別を撤廃し、すべての労働者派遣事業を許可制とする。
・派遣労働者の保護に配慮した上で、小規模派遣元事業主への配慮措置を講ずる。
3.期間制限
(1)新たな期間制限の考え方
・派遣労働を臨時的・一時的な働き方と位置付けるとともに、派遣先の常用労働者との代替が起こらないよう、派遣労働は臨時的・一時的な利用に限ることを原則とする。
・26業務という区分及び業務単位での期間制限は、わかりにくい等の様々な課題があることから撤廃した上で、一定の場合を除き、派遣労働者個人単位と派遣先単位の2つの期間制限を軸とする制度に見直す。
(2)個人単位の期間制限について
・(5)で述べる例外を除き、派遣先の同一の組織単位における同一の派遣労働者の継続した受入は3年を上限とする。
・組織単位は、業務のまとまりがあり、かつ、その長が業務の配分及び労務管理上の指揮監督権限を有する単位として派遣契約上明確にしたものとする。
※3年を超えて受け入れた場合は労働契約申込みみなし制度の適用
(3)派遣労働者に対する雇用安定措置について
・派遣元事業主は、(2)の上限に達する派遣労働者に対し、本人が引き続き就業することを希望する場合は、以下の措置のいずれかを講ずるものとする。(「雇用安定措置」)
ア.派遣先への直接雇用の依頼
イ.新たな就業機会(派遣先)の提供
ウ.派遣元事業主において無期雇用
エ.その他、安定した雇用の継続が確実に図られる措置
※アからエのいずれを講じることも可とする。アを講じた場合に、直接雇用に至らなかったときは、その後イからエまでの措置のいずれかを講ずるものとする。
・アの直接雇用の依頼が、実際に直接雇用に結びつくような措置を講ずる。
(4)派遣先における期間制限について
・派遣先は、(5)で述べる例外を除き、同一の事業所において3年を超えて継続して派遣労働者を受け入れてはならないものとする。
・派遣先が、派遣労働者の受入開始から3年を経過するときまでに、当該事業所における過半数労働組合(過半数労働組合がない場合には民主的な手続により選出された過半数代表者)から意見を聴取した場合には、さらに3年間派遣労働者を受け入れることができるものとする。その後さらに3年が経過したときも同様とする。
(5) 個人単位及び派遣先単位の期間制限の例外について
・以下を(2)から(4)の措置の例外とする。
ア.無期雇用の派遣労働者
イ.60歳以上の高齢者
ウ.現行制度で期間制限の例外となっている日数限定業務、有期プロジェクト業務、育児休業の代替要員などの業務への派遣
※有期プロジェクト業務については、終期が明確である限り派遣期間を制限しない。
4.派遣先の責任
国は、派遣先の使用者性に関する代表的な裁判例等について周知を図る。
5.派遣労働者の処遇
(1)均衡待遇の推進
派遣先は、派遣元事業主の求めに応じ、派遣労働者と同種の業務に従事する労働者の賃金に関する情報を提供する等の適切な措置を講ずるよう配慮するものとする。
(2)労働・社会保険の適用促進
・派遣元事業主は、派遣労働者として雇用しようとする者に対し、労働・社会保険の加入資格の有無を明示するものとする。
・派遣労働者を労働・社会保険に加入させてから派遣すること等を定めた派遣元事業主・派遣先の両指針の内容のうち、可能なものを法律等に格上げする。
6.派遣労働者のキャリアアップ措置
(1)派遣元事業主が講ずべき措置
派遣元事業主は、雇用する派遣労働者に対して、計画的な教育訓練、キャリア・コンサルティングを実施するものとする。特に無期雇用派遣労働者に対しては、長期的キャリア形成を視野に入れてこれらを実施するものとする。
(2)派遣先が講ずべき措置
派遣先は、派遣元事業主の求めに応じ、受け入れている派遣労働者の職務遂行能力等に関する情報を派遣元事業主に提供するよう努めるものとする。
7.施行期日
平成27 年4月1日(予定)