青色申告書を提出する中小企業者等の各事業年度において、損金に算入される試験研究費の額がある場合には、試験研究費の額の一定割合について税額控除が認められますが、平成26年度の税制改正において、拡充・延長が図られました。
■研究開発税制の概要
◎試験研究費の額とは
製品の製造又は技術の改良、考案若しくは発明に係る試験研究のために要する原材料費、人件費(専門的知識をもって試験研究の業務に専ら従事する者に係る費用に限ります)、委託費、経費等の額をいいます。
ただし、試験研究費に充てるために他の者から支払を受ける金額(例えば受託試験研究費など)がある場合は、その金額を控除した金額が試験研究費の額となります。
◎制度の概要
試験研究費の総額の12%が税額控除できる(A.総額型)ことに加え、要件を満たせば「上乗せ措置」として、さらにB.増加型、C.高水準型、のいずれかを選択して税額控除できます。詳細は以下の表のとおりです。
| A.総額型 | B.増加型 | C.高水準型 |
措置の内容 | 試験研究費の額がある場合に税額控除できる | 試験研究費が、比較試験研究費、基準試験研究費とも上回る場合に税額控除できる | 試験研究費が、平均売上金額の10%を上回る場合に税額控除できる |
税額控除対象 | 試験研究費の総額 | 比較試験研究費の額を上回る部分 | 平均売上金額の10%を上回る部分 |
税額控除率 | 12% | 5% | 超過税額控除割合 |
税額控除限度額 | 当期法人税額の30%相当額 | 当期法人税額の10%相当額 | 当期法人税額の10%相当額 |
繰越制度 | 税額控除限度額に達したて控除しきれなかった額がある場合、次の事業年度に繰越可能 | なし | なし |
・比較試験研究費 :原則として、過去3事業年度の損金に計上される試験研究費の平均額
・基準試験研究費 :過去2事業年度の試験研究費のうち最も高い額
・平均売上金額 :当該事業年度を含む過去4年間の平均売上金額
・超過税額控除割合:試験研究費割合(当該事業年度の試験研究費÷平均売上金額)−10%×0.2
◎適用期間
A.総額型
適用期限なし(恒久措置)
ただし、税額控除限度額が30%に措置されている期間は、平成26年度末まで(通常は20%)
B.増加型・C.高水準型
平成28年度末まで
※平成26年4月1日以降、増加型については一部改正。
◎適用対象者
青色申告書を提出し、試験研究を行う中小企業者等
◎適用手続
<個人事業主>
・中小企業者が試験研究を行った場合の所得税額の特別控除に関する明細書」、「試験研究費の増加額等に係る所得税額の特別控除に関する明細書」、「試験研究を行った場合の所得税額の特別控除における平均売上金額、比較試験研究費の額及び基準試験研究費の額の計算に関する明細書」を確定申告書に添付すること
<法人>
・法人税の確定申告書に「別表六(七)、六(八)、六(九)」と「適用額明細書」を添付すること
◎制度の改正について〜平成26年4月1日より適用
【改正の内容】
・増加型上乗せ措置の抜本的拡充
改正前の措置では増加率にかかわらず控除率は5%ですが、平成26年度から平成28年度の間は、試験研究費を多く増加させるほど控除率が大きくなる(最大で30%)制度となります。
・上乗せ措置の延長
平成25年度末に期限が切れる上乗せ措置 について、増加型・高水準型とも、平成28年度末まで延長されます。
【試験研究費を増加させる場合のメリット】
平成26年度に試験研究費を30%増加させた場合には、改正前制度と比べて約1.4倍の控除を受けることができます。
事例:試験研究費を1億円支出している会社の場合。(控除上限は考慮せず)
| 試験研究費を 維持する場合 | 試験研究費を30% 増加する場合 (改正前) |
| 試験研究費を30% 増加する場合 (改正後) |
試験研究費 | 100百万円 | 130百万円 |
| 130百万円 |
増加型控除額 | 0百万円 | 1.5百万円 |
| 9百万円 |
総額型控除額 | 12百万円 | 15.6百万円 |
| 15.6百万円 |
控除額合計 | 12百万円 | 17.1百万円 |
| 24.6百万円 |