経済産業省と文部科学省は、研究者等が大学や公的研究機関、民間企業等の間で、それぞれと雇用契約関係を結び、各機関の責任の下で業務を行うことが可能となる仕組みである「クロスアポイントメント制度」の基本的枠組と制度活用にあたっての留意点をとりまとめ公表しました。
■クロスアポイントメント制度の概要
◎背景
新たなイノベーション創出のためには、大学や公的研究機関等の技術シーズが円滑に民間企業に「橋渡し」されることが重要であり、卓越した人材が大学や公的研究機関、企業等の壁を越えて、複数の組織において活躍できるような環境を整備することが必要とされています。そのためには、研究者等が、それぞれの機関における役割に応じて研究・開発及び教育に従事することを可能とするクロスアポイントメント制度の導入が有効と考えられています。
また、「『日本再興戦略』改訂2014」(平成26年6月24日閣議決定)や「科学技術イノベーション総合戦略2014」(平成26年6月24日閣議決定)等においても、クロスアポイントメント制度の積極的な導入・活用の必要性がうたわれています。
◎クロスアポイントメント制度とは
クロスアポイントメント制度とは、研究者等が大学、公的研究機関、企業の中で、二つ以上の機関に雇用されつつ、一定のエフォート管理の下で、それぞれの機関における役割に応じて研究・開発及び教育に従事することを可能にする制度です。
今回、内閣府の取りまとめの下、文部科学省、経済産業省でクロスアポイントメント制度の基本的枠組について検討するとともに、その実施に当たっての医療保険、年金等に関する各種法制度との関係等を制度官庁に確認し、「クロスアポイントメント制度の基本的枠組と留意点」としてとりまとめられました。
今後、大学や公的研究機関、企業等の間でクロスアポイントメント制度が活用されることにより、研究者等の人材が組織の壁を越えて活躍することを通じて、イノベーション・ナショナルシステムにおける技術の橋渡し機能が強化されることが期待されます。
◎クロスアポイントメント制度と労働者供給事業との関係について
「在籍型出向」形態のクロスアポイントメントを行う際に、出向元機関が研究者等に出向を命じるには、対象者の個別的な同意を得るか、出向先での賃金・労働条件、出向の期間、復帰の仕方などが就業規則等によって労働者の利益に配慮して整備されている必要があります。また、出向命令が、その必要性、対象労働者の選定等に係る事情に照らしてその権利を濫用したものと認められる場合には、その命令は無効となります(労働契約法第14条)。