経済産業省は、平成26年度次世代物流システム構築事業の一環として、日本気象協会と連携し、天気予報で物流を変える取り組みとして「需要予測の精度向上による食品ロス削減及び省エネ物流プロジェクト」を実施しています。この程、企業と連携してシミュレーションを行った結果、当初の目標であった5%を超えて余剰生産量(食品ロス)が一定量削減され、二酸化炭素の削減につながる可能性が高いことが確認されたデータが公表されました。
■概要
1.背景
食品の物流では、製・配・販の各社がそれぞれ独自に、気象情報や各社が持つPOS(販売時点情報管理)データなどに基づいて需要予測を行うのが一般的です。
しかし、製・配・販各社が需要予測で用いるデータは十分に共有されているとは言えず、各流通段階で生産量や注文量にミスマッチ(予測の誤差)が起こり、廃棄や返品ロスなどのムダが生じる一因となっています。
そこで、「需要予測の精度向上による食品ロス削減及び省エネ物流プロジェクト」では、日本気象協会が気象情報に加えてPOSデータなどのビッグデータも解析し、高度な需要予測を行ったうえで製・配・販の各社に提供することとしています。
これにより、参加企業における廃棄や返品等を減少させ、更には不要に発生している二酸化炭素を5%削減することを予定しているものです。
2.主要な中間成果
今回の検証を踏まえると、気象情報を用いた需要予測を行うことで食品ロス削減の効果が大いに期待でき、不要に発生している二酸化炭素削減につながる可能性が確認された。
◎主な検討内容について
(1)食品ロスの検討
開発した需要推定統計モデル手法を用いて株式会社Mizkan(本社:愛知県半田市)の1 商品の需要予測を行ったところ、当初の目標であった5%を超えて余剰生産量(食品ロス)が一定量削減されることが示唆された。
(2)気象予測手法の検討
長期の気象予測は、気象庁の1か月アンサンブル予測(※注)に加えて、ヨー ロッパ気象局のアンサンブル予測を利用することで精度が向上することが確認された。
(3)需要解析手法の検討
売上解析では、気温以外に、気温による消費者心理の転換点解析等を考慮した日本気象協会独自の需要推定統計モデル手法が有効であり、精度が高い検討結果となることが判明した。
※注:アンサンブル予測
予測の誤差の原因は、大きく分けて、初期値の誤差が拡大するケースと予測モデ ルに誤りがあるケースがあります。そのため、予測精度を向上させるために、少しずつ異なる初期値を多数用意するなどして多数の予報を行い、その平均やばらつきの程度といった数値を活用して、最も起こりやすい現象を予報する手法がアンサンブル予測です。この手法を用いることで、初期値の値での誤差による影響を低減し、より正確な予測が可能となります。