厚生労働省は、改正障害者雇用促進法に基づく「障害者に対する差別の禁止に関する規定に定める事項に関し、事業主が適切に対処するための指針」(障害者差別禁止指針)と、「雇用の分野における障害者と障害者でない者との均等な機会若しくは待遇の確保又は障害者である労働者の有する能力の有効な発揮の支障となっている事情を改善するために事業主が講ずべき措置に関する指針」(合理的配慮指針)を策定し告示しました。
■障害者差別禁止指針の概要
(1)基本的な考え方
・対象となる事業主の範囲は、すべての事業主。
・障害者であることを理由とする差別(直接差別)を禁止。
(車いす、補助犬その他の支援器具などの利用、介助者の付き添いなどの利用を理由とする不当な不利益取扱いを含む)
・事業主や同じ職場で働く者が、障害特性に関する正しい知識の取得や理解を深めることが重要。
(2)差別の禁止
募集・採用、賃金、配置、昇進、降格、教育訓練などの各項目において、障害者であることを理由に障害者を排除することや、障害者に対してのみ不利な条件とすることなどが、差別に該当するとして整理。
例:募集・採用
イ)障害者であることを理由として、障害者を募集又は採用の対象から排除すること。
ロ)募集又は採用に当たって、障害者に対してのみ不利な条件を付すこと。
ハ)採用の基準を満たす者の中から障害者でない者を優先して採用すること。
ただし、次の措置を講ずることは、障害者であることを理由とする差別に該当しない。
・積極的差別是正措置として、障害者を有利に取り扱うこと。
・合理的配慮を提供し、労働能力などを適正に評価した結果、異なる取扱いを行うこと。
・合理的配慮の措置を講ずること。
■合理的配慮指針の概要
(1)基本的な考え方
・対象となる事業主の範囲は、すべての事業主。
・合理的配慮は、個々の事情を有する障害者と事業主との相互理解の中で提供されるべき性質のもの。
(2)合理的配慮の内容
合理的配慮の事例として、多くの事業主が対応できると考えられる措置の例を「別表」として記載。
(別表の記載例)
【募集及び採用時】
・募集内容について、音声等で提供すること。(視覚障害)
・面接を筆談等により行うこと。(聴覚・言語障害) など
【採用後】
・机の高さを調節すること等作業を可能にする工夫を行うこと。(肢体不自由)
・本人の習熟度に応じて業務量を徐々に増やしていくこと。(知的障害)
・出退勤時刻・休暇・休憩に関し、通院・体調に配慮すること。(精神障害ほか) など
(3)合理的配慮の手続
・募集/採用時: 障害者から事業主に対し、支障となっている事情などを申し出る。
・採用後: 事業主から障害者に対し、職場で支障となっている事情の有無を確認する。
・合理的配慮に関する措置について、事業主と障害者で話し合う。
・合理的配慮に関する措置を確定し、講ずることとした措置の内容及び理由(「過重な負担」にあたる場合は、その旨及びその理由)を障害者に説明する。採用後において、措置に一定の時間がかかる場合はその旨を障害者に説明する。
※障害者の意向確認が困難な場合、就労支援機関の職員等に障害者の補佐を求めても差し支えない。
(4)過重な負担
・合理的配慮の提供の義務は、事業主に対して「過重な負担」を及ぼすこととなる場合を除く。事業主は、過重な負担に当たるか否かについて、次の要素を総合的に勘案しながら個別に判断する。
ア.事業活動への影響の程度、イ.実現困難度、ウ.費用・負担の程度、エ.企業の規模、オ.企業の財務状況、カ.公的支援の有無
・事業主は、過重な負担に当たると判断した場合は、その旨及びその理由を障害者に説明する。その場合でも、事業主は、障害者の意向を十分に尊重した上で、過重な負担にならない範囲で、合理的配慮の措置を講ずる。
(5)相談体制の整備
・事業主は、障害者からの相談に適切に対応するために、必要な体制の整備や、相談者のプライバシーを保護するために必要な措置を講じ、その旨を労働者に周知する。
・事業主は、相談したことを理由とする不利益取扱いの禁止を定め、当該措置を講じていることについて、労働者に周知する。
■施行予定日
平成28年4月