平成26年6月に成立した小規模企業振興基本法に基づく初めての「小規模企業白書」が公表されています。白書では、全国385万社の中小企業、中でもその90%、334 万社を占める小規模事業社(常用従業者数が20 人以下(商業又はサービス業は5 人以下))の業種構成の分析や従業者に占める親族の割合などの実態調査、販路開拓のための取組や新しい働き方として注目されているフリーランスの実態についての分析が行われています。
■小規模企業白書の概要
| 中小企業基本法の定義 | ||
中小企業者 | うち小規模事業者 ※ | ||
業種 | 資本金又は従業員 | 従業員 | |
製造業その他 | 3億円以下 | 300人以下 | 20人以下 |
卸売業 | 1億円以下 | 100人以下 | 5人以下 |
サービス業 | 5,000万円以下 | 100人以下 | 5人以下 |
小売業 | 5,000万円以下 | 50人以下 | 5人以下 |
| 企業集 | 従業者数 | |
大企業 | 1.1万者 | 1,397万人 | |
中小企業 | 385.3万者 | 3,217万人 | |
うち小規模事業者 | 334.3万者 | 1,192万人 |
※個人事業者も含まれることをわかりやすく伝えるため、上記図表を含め、以下「小規模企業」ではなく「小規模事業者」という。
◎小規模事業者の実態〜業種構成、常用雇用の有無の状況
・小規模事業者の業種構成としては「卸売業、小売業」、「宿泊業、飲食サービス業」、「建設業」、「製造業」、「生活関連サービス業・娯楽業」、「不動産業、物品賃貸業」で80%を超えています。
・小規模事業者(334万者)の常用雇用者(※注)の有無
常用雇用者なし⇒151万者・45%
常用雇用者あり⇒183万者・55%
(※注)「常用雇用者」は、法人の有給役員、個人事業主、無給の家族従業者は含まない。
◎小規模事業者における小企業者の占有率
・小規模事業者334万者のうち、312万者(93%)は小企業者である。
・個人事業者206万者のうち205万者(99%)、法人128万者のうち107万者(84%)は「小企業者」(※注)である。業種別に見ても「電気・ガス・熱供給・水道業」など一部の業種を除き、業種を問わず、ほとんどが「小企業者」。
(※注)「小企業者」とは、小規模企業振興基本法第2条第2項に基づき「概ね常時使用する従業員の数が5人以下の事業者をいう」と定義されている。
◎小規模事業者の従業者構成及び経営者の手取り年収
・小規模事業者の従業者は親族依存度が高い。特に個人事業者では70%弱が親族によって支えられている。
・手取り年収は、個人事業主で300万円までが60%強を占め、家族や親族全体の収入で家計を支えている。
◎小規模事業者の従業者の出身地及び最終学歴等
・従業者(経営者を含む)の出身地は本社所在地と同じ市区町村、最終学歴は高等学校が多い。
・経営者から見た従業員の評価について、会社や事業に貢献しているとする回答が90%を超える。
・人材の採用方法は、知人からの紹介や個人的な勧誘とする回答が30%を超える。
◎小規模事業者の施策情報の入手方法
・小規模事業者は、顧客との会話、業界や地域の会合など、日頃の様々なコミュニケーションから経営や支援施策に関する情報を入手している。
・国、自治体、商工会・商工会議所などの支援機関は、これらの日頃の様々なコミュニケーションの中に、施策などの情報を展開していくことが重要である。
主な回答(複数回答) ・日常的なやり取り(仕入、販売先、 顧客との会話等) ⇒64.1% ・業界や地域の経営者等の会合 ⇒50.1% ・施策のチラシ・パンフレット ⇒39.8% ・ホームページ ⇒26.3% ・展示会・セミナー ⇒20.7% ・メールマガジン ⇒3.8% |
◎小規模事業者の事業所数の業種別推移
・小規模事業所数の経年推移を業種別に見ると「小売業」は、ピーク時から50%減、「製造業」は46%減と半減。
・「サービス業」、「不動産業」は微増傾向。それ以外の業種は、ほぼ横ばいとなっている。
・「サービス業」は、事業所数自体はここ20年横ばいとなっているが、全業種に占めるシェアは高まってきている。
◎小規模事業者の効果的な販路開拓
・販路開拓のため、営業能力の高い人材の新規採用に取り組んでいる事業者は、足下の売上は増加傾向だがその数は比較的少数。・他方、多くの事業者が取り組んでいる顧客への売り込みなどが、売上増加につながっている割合は高くない。
主な回答(複数回答) ・新しい顧客への直接訪問・売り込み ⇒31.7% ・新しい顧客への直接訪問・売り込み ⇒31.3% ・ホームページ、Eメールを活用した情報発信 ⇒24.4% ・営業能力の高い人材の新規採用 ⇒7.9% ・特に取り組んでいない ⇒49.5% |
◎小規模事業者の経営計画の策定と意識の変化
・平成25年度補正予算で措置された「小規模事業者持続化補助金(※注)」の採択事業者アンケートによれば、全体の約60%が同補助金の活用をきっかけに初めて経営計画を作成したと回答。
・経営計画作成後の事業者の意識面では、「自社の強み・弱みが明らかになった」、「新たな事業を企画できた」とする回答が50%を超えたほか、「事業の見直しを行うきっかけとなった」が約40%になるなど、経営に向き合おうとする意識が生まれている。
・本補助金で求めている経営計画は1ページ程の簡易なものであることから、その位の分量でも十分効果が上がるものと考えられている。
(※注)「小規模事業者持続化補助金」は、小規模事業者が、商工会・商工会議所と一体となって、販路開拓に取り組む費用(チラシ作成費用や商談会参加のための運賃など)を支援。(補助上限50万円、補助率2/3、平成25年度補正予算分:申請数27,409件→採択数 13,327件)