経産省は、CPSによるデータ駆動型社会に対応した制度整備、ベンチャーや大企業等の様々なプレイヤーが連携した推進体制の整備、幅広い分野において新しいビジネスモデルにつながるユースケースの創出、さらに新たなビジネスモデルを支えるコアテクノロジーの研究開発やセキュリティ対策、人材育成の強化といった主要な施策の方向性をとりまとめ公表しました。
■CPSによるデータ駆動型社会の概要
IoT・ビッグデータ・AI等のITの技術革新によって、実世界から得られたデータを分析・解析し、その結果を再び実世界にフィードバックするというサイバーフィジカルシステム(CPS)が現実のものになっています。これにより、全ての産業でデータを核としたビジネスモデルの革新が産業の垣根を越えて生じ、今後は産業構造の大変革が予想されること。
そして、何よりも欧米各国が先進的な取組を始める中、こうした変革への対応が遅れれば日本企業が国際競争を失うおそれもあるため、データを活用した新たなビジネスモデルを創出する企業のチャレンジを促進する環境を整備することが重要である。
◎社会全体がCPSにより変革される「データ駆動型社会」
実世界とサイバー空間との相互連関(Cyber Physical System)が、社会のあらゆる領域に実装され、大きな社会的価値を生み出していく社会
◎CPSによるデータ駆動型社会の実現のための横断的取組
◆方向性Ⅰ:制度を変える
【課題】
ITの技術進歩を前提としていない現行制度が新たなビジネスモデルの創出を躊躇させ、企業間のデータ流通を萎縮させている。
例えば、
・自動運転と道路交通法との関係、シェアリングビジネスと既存業法との関係など既存規制に抵触する可能 性
・セキュリティーやプライバシーへの懸念
≪新ビジネス創出のための制度を整備≫
・データを活用した新ビジネス創出のための枠組
・セキュリティリスクへの対応力向上のための枠組
・上記を含めた情報処理促進法の見直しや執行体制の整備を検討
◆方向性Ⅱ:チャレンジを促す
【課題】
・自前主義に固執し、自社の強みを活かした他社との連携によるエコシステムの構築・参画ができていない。
・ベンチャーを含め、ゲームチェンジを起こすチャレンジが限定的。
≪企業間連携により、新たな産業モデルを生み出す≫
・CPSをビジネス化する具体事例を各分野で展開
・特区活用も含め、規制改革と一体的に推進
・プライバシー、標準、セキュリティ等のルール策定
・企業間連携の中核拠点として「CPS推進協議会(仮称)」を年内に創設
・「データ流通市場」を創出するための契約ひな形等を整備
≪企業がCPSにチャレンジする環境を抜本的に強化≫
・攻めのデータ経営への転換を市場が評価する仕組みの構築(情報開示の推進等)
・ゲームチェンジを起こすITスタートアップ企業創出に向け、起業成功者が起業家を育てるスタートアップアクセラレータ組織を組成
◆方向性Ⅲ:基盤を整備する
【課題1:セキュリティ】
サイバー攻撃の高度化によりサイバーセキュリティリスクが深刻化。
≪国がイニシアティブを取った企業等のサイバーセキュリティ対策強化≫
・CPSの到来を見据えた「セキュリティ経営ガイドライン」策定
・第三者認証の強化による企業等の取組を「見える化」、同認証の国際標準化
・サイバー攻撃情報や対応策に関する、官民及び業種の垣根を越えた情報共有の仕組づくり
【課題2:技術】
CPSの実現を支えるコアテクノロジーの蓄積が不十分
≪CPSのコアテクノロジーを世界最先端に≫
・人工知能(AI)の実用化と基礎研究の進展の好循環を生むプラットフォーム機能を果たす人工知能の研究センターを産総研に整備
・外部電源が不要な自立センサシステムや大容量データの処理技術等の研究開発を強化
【課題3:人材】
IT人材が質・量ともにCPSに対応できていない。下請構造による低い生産性。
≪CPS関連のIT人材確保強化≫
・インド、ベトナム等の優れたIT人材活用に向け、日本への留学、就職等を支援するための官民の枠組を構築
・非効率でセキュリティリスクも高い「丸投げ下請」を防止し、下請取引の適正化を促進するための「下請ガイドライン」の強化
・ITとビジネスの両方がわかるCPSビジネス拡大のための人材確保・育成