厚生労働省は、「平成27年版労働経済白書」を公表しました。平成27年版では、わが国の経済活力を維持・向上させていくためには、労働力の減少という経済の供給制約の克服と持続的な賃金の上昇を可能とするための取組が必要という観点から、経済再生に向けた課題、より効率的な働き方の実現、人口減少下における地域経済の在り方についての分析が行われています。
■平成27年版労働経済白書の概要
本白書で取り上げられている項目のうち、「効率的な働き方の実現に向けて」についての概要を紹介します。
ア.わが国の働き方の現状
労働者の総実労働時間はパートタイム労働者比率の上昇等により減少しているが、一般労働者の総実労働時間は大きく変化していない。
1週間の就業時間が60時間以上の労働者について、産業別にみると宿泊業、飲食サービス業、運輸業、郵便業、生活関連サービス業、娯楽業で割合が高い。また、年齢別にみると、男性で、1週間の就業時間が60時間以上である正規の職員・従業員の割合は、20歳台後半や30歳台で高い。
イ.労使双方からみる働き方の現状と課題〜その1
労使双方への調査によると、所定外労働時間が発生する理由としては、労使ともに、業務の繁閑が激しい、突発的な業務が生じやすい、人手不足を挙げる割合が高い。
それらに加えて、労働者側は、「自分が納得できるまで仕上げたいから」とする割合が高い。一方、「残業手当や休日手当を稼ぎたいから」とする割合は低い。
企業側は、「顧客の都合上、所定外でないとできない仕事があるから」「仕事の進め方にムダがあるから」等に加え、「能力・技術不足で時間がかかってしまう従業員がいるから」とする割合が高い。
ウ.労使双方からみる働き方の現状と課題〜その2
企業側の調査によると、人事評価や昇進・昇格において、労働時間が長いことを評価していないとする割合が高い。
効率的な働き方のツールとしてITの活用が考えられ、実際にITの活用により、総実労働時間数は減少したと回答する企業の割合は約2割となっている。
他律的な要因による長時間労働に対しては、需要の繁閑の分析による効率的な人員配置、外部から影響を受けにくいビジネスモデルの構築が、効率的な業務遂行に対しては、上司・部下とのコミュニケーション、ITの活用が重要である。
エ.働き方の改善による労働者、企業双方の好循環に向けて〜その1
所定外労働が実際に短縮された企業が行っている取組としては、「実態の把握」「長時間労働者やその上司等に対する注意喚起や助言」「仕事の内容・分担の見直し」が多くなっている。
所定外労働時間を短縮している企業は、自社の労働生産性は同業他社に比べて高いと認識しており、労働者だけではなく、企業にとっても意義がある。企業へのヒアリングでも、労働時間の削減により疲労度の低減、モチベーションの向上や、自己研さん等の効果があげられていた。
オ.働き方の改善による労働者、企業双方の好循環に向けて〜その2
労働時間を削減しつつ、生産活動を維持・向上していくためには、労働生産性の向上や労働投入の増加が必要である。
教育訓練に取り組んでいる企業は、自社の労働生産性が同業他社と比べて高いと認識し、売上高(過去3年間)が増加したとする割合が高い。
追加で就業を希望する者、勤務時間・休日などが希望と合わず失業している者などが、希望に応じて労働参加できるよう、ニーズに応じた多様な働き方を提供することが重要である。